歯の神経の治療(根管治療)は実に悩ましい
歯医者さん泣かせの治療の筆頭に上がります。
まさに「世の中にたえて根治のなかりせば施術時の心はのどけからまし」です。
最初に根管治療とは・・・
むし歯が進行し、細菌が歯の中まで侵入した場合などに
歯の中のいわゆる神経を取りのぞき、綺麗に除菌し、神経の代わりにゴム栓をするという
処置になります。
歯医者さんを悩ませるその理由の一つに「診断の難しさ」があります。
その一例をご説明いたします。
先日、拝見しました若い男性、前歯に相当する部分が腫れて膿が出ています。
「ははーん、これは典型的な歯の根がうんでいる状態だな」
と考えながら犯人とおぼしき歯をまじまじと観察しても
「あれ?むし歯も神経をとった様子も無い・・・・・」
「うーむ、こういう時はレントゲンだな〜」
とレントゲンを撮影させていただくと
上の前歯のあたりなんかおかしいのがわかりますか?
レントゲンなぞ、見慣れているからわかるのですが、皆さんおわかりになりますか?
では、わかりやすいように赤丸の印をおつけしますね
それで、さらに拡大しますと
「うーん、言われてみればどうでしょう?」
やはり丸印をお付けします
なにがなんやらですよね、そこでCT撮影します。
今度はわかりやすいと思いますよ。
えっ!もっとわからないそうですね〜
やはり赤丸しましょうね
これでおわかりでしょうか?
レントゲンは空気や水など素通しでフィルム(センサー)に届くと「黒く」
その逆に、歯や骨などX線が通りにくいと「白く」写ります。
なので根の先の周囲が黒く写っているとすると「あるべき骨が溶けている」
と考えるのです。
今回はお話を詳しく聞くと3,4年前に酔って転んで歯を強くぶつけたことがあるとのこと
従って、むし歯で神経が死んでしまったのでは無く、歯に衝撃が伝わったことで
中の神経がおなくなりになったと考えました。
その後、先ほど説明しましたように、歯の頭から穴を開けて消毒し
ゴム栓をしました。
そのレントゲン写真が下です。
先ほどと比較すると真っ白く写っているのがそのゴム栓です。
更にマニアックに説明させていただきますと・・・・
実はあることに気がついていました。
もう一度、CTの一部をご覧になって下さい。
根の先の黒い部分が変位しているということ
平たく言えば、根の先の黒い骨の溶けている部分が
根の先を左右対称に丸く囲んでいるのでは無く、偏っているということ・・
これは多くの場合、神経の入っていた管が枝分かれしているということを
しめします。
そこで、もう一度よーく処置後のレントゲンを観察いたします。
今度は、白黒を反転してみましょう。
さらに、アップします
おわかりになりました?黒いヒゲのようなものが少し写っているのが
ご覧になれるかと思います。
分岐した管があるという仮説はおそらく間違っていないと考えます。
このように
「CT」は歯の根の状態の診断をするときに非常に役に立ちます。
たとえて言うならば、
山登りするときに、地図があるようなもの
登山の難易度を事前に判断し、危険を予知し、避けることができます。
「何度も歯医者さんに通っているのだけど、症状が改善しない」とか
「もう抜かないといけないと言われた」などのとき
菊地歯科では、ご相談だけでも承ります。
納得して次のステップに進みたいですよね
ちなみに当院のCTは0.02〜0.04マイクロシーベルト(実は器械により大幅に異なります)という
低被爆になりますので、最小限の線量で撮影ができることをお申し添えいたします。
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