歯科医院でのレントゲンは貴重な検査でもあり記録でもあります。是非、歯科医院で印刷していただいて、ご自宅で保存してください。

2021年の前半は、折れて残った、神経を取る針を取り除く治療をよく行いました。「歯医者さんで、こんなことあるんだ〜」と思われるかもしれませんが
皆さんのお口の中には結構見かけます。もちろん、すべてが悪さをするわけではありませんが、治療のチャンスをいただいた『5つの症例』を振り返ります。

Aさんの場合
最初はわかりやすい前歯の例です。これは針と言うよりおそらく柱?として歯の中央に入れたものと考えます。根の先の骨が膿んでいる状況なので取り除いて
歯の中を消毒し直しました。

金属はX線を通さないのでくっきりとした白色に写ります。
赤い線で囲んだ部分が金属の芯棒です。これを取り除かないと、その先に消毒の機材が届きません。
根の管の先の部分の直径が大きかったので「MTA」セメントという素材で封鎖しています。

これで骨の再生を待ちます。

Bさんの場合
これもレントゲン(CT)を見てみましょう。どこに針が折れて放置されているか当ててみてください。上の大臼歯(奥歯)です。

同じようにはっきりと白い部分が針となります
赤い線で囲んだ部分の白いところが折れ残った金属の針です。
左側が前側から見た画像、右側が横から見た画像です。

緑の点線で囲んだ部分が骨が腐って溶けている部分です。

顕微鏡でのぞいた写真です。針の頭が見えるのがおわかりでしょうか?
よくわかりました、こちらが金属の針です。言われてみれば・・・だと思います。
マイクロスコープ(手術用顕微鏡)が無ければ確認することもできませんので
現代の歯科医療はCTとマイクロスコープが必須になります。
昭和30年台に作られた保険医療では難しいところです。
取り除いた後です。
根の管にゴム栓を終えた後のレントゲン写真です。

Cさんの場合
これもわかりやすい例ですが、針が折れているのともう一つ課題があります。それは間違った方向にドリルで穴を開けられてしまっています。

治療前のレントゲンです。
赤い線で囲まれた部分に針が折れ残っています。
青い部分は間違って穴を開けられてしまっている部分です。

もっとわかりやすいCTの画像を見てみましょう。

まっすぐな白い部分が針です。
赤い線で囲んでいます
顕微鏡の画像です。もうおわかりですね矢印の先が針の頭です。
針を取り除き、ゴム栓をしています。
赤く書いてある穴は樹脂で封鎖してあります。

Dさんの場合
このケースはかなり長い針が歯の中に残っていました。さすがにこれは折れたら施術している歯科医はわかっていると思うのですけどもね。

もうおわかりですね?
はい、赤い線で囲んだ部分が金属の針です。
取り除いた針です。ネジネジしているのがレントゲンと同じなのが
おわかりでしょうか?
治療後です。今回はゴム栓ではなく、MTAセメントという素材で埋めています。

Eさんの場合
これも同じ繰り返しです。

もうだんだんレントゲンを見るのもなれてきましたね。
さて、針を見つけてください!
はい、正解はこちらです。この針も無事に除去できました。
ゴム栓をした後のレントゲンです。根の管が一本の歯に3本あります。

 針を折るの原因の一つの理由はズバリ針を使い回すことによる金属疲労です。これは歯科医師だけに責任があるのでは無く、その背景の医療制度そのものにも原因があると考えます。
 半世紀以上の1961年に作られた歯科の保険医療制度は治療費も内容もほとんど変わらず今につながっています。時代背景も技術や倫理も変わった現在に適合していないのは明白です。
 結局「しわ寄せ」は何も知らされていない国民にあつまります。行政も歯科医師会も変化するエネルギーもリソースもありません。今後も変わらないでしょう。唯一の可能性は医療消費者である患者さん一人一人が知識を得て賢くなることだと思います。
 医療の問題の一つは情報の非対称性といい、先生は専門家で詳しいけれど患者さんは専門知識が無いので医療サービスに参加できないということです。

 一度レントゲンの確認の仕方がわかれば皆さんでもなんとなく理解できると思うのです。そうすればただ、されるがままでは無く、情報を共有して歯科治療に是非参加してください。