さて、前回のつづきです。
痛みが取れない原因が間違って穴を開けられてしまったことだと判明しました。今回から実際に治療が始まりました。実はそれだけではすまなかった事が発覚しました。それでは治療の進行を解説いたします。最初に仮歯を外してみます。
天然の歯の根の部分が残っていて、そこに、いわゆる、差し歯のような歯が入っていました。仮歯だけをアップして見てみます。
内部が相当、汚染されていることがわかります。そもそも、この状態では治療が意味をなしていません。それを図説して説明します。
次に、お口の中に注目してみましょう。今回は前から数えて4番目の歯に注目します。この上顎の4番目の歯は「小臼歯」に分類されて、多くの場合、神経の入っていた管は2本で、3本あることはありません。
サー、ここで間違い探しは事前のレントゲンからすでに赤文字の「2」の穴だと分かっていますので、こちらは後回しにして、1、3からアプローチすることにいたしました。山に登るのに事前に登山地図を良く読図し把握して登山するのと、地図やコンパスを持たずに闇雲に登るのとは、遭難の危険度がどちらか高いかお分かりだと思います。地図やコンパスである「CT」、GPSである「マイクロスコープ」を使い尚且つ登山経験が豊富な登山家である必要が歯科医には求められると思います。ホームページにはマイクロスコープを持っていると謳っているだけで実際には使っていない歯科医は装備も持たずに、大勢のお客をガイドする素人の登山家と言って差し支えないと考えます。
ここから、さらに中を消毒したいのですが、ここで課題を整理します。ネット社会では根管治療をするのに良い歯医者さんを探す基準が「ラバーダム」を使う歯医者さんであるということがまことしやかに流布されています。しかしその前に大事なステップがあります。
1、感染したむし歯の部分をキレイに削って取り除く。これは歯の縁だけでなく、管の内部も見逃さないようにしなければいけません。これもマイクロスコープがなければ見分けることも処置することもできません。
2、「隔壁」と呼ばれる樹脂の壁を歯の頭の部分がない場合は作ります。これは治療中に消毒液を溜められるように、また、細菌が入り込まないように、ラーバーダムのクランプと言われる金具を取り付けることができるように多くは樹脂で作ります。この隔壁が無いとそもそもラバーダムが支えないのでほぼ必須の手順となりますが大抵の場合ここまでで1時間程度の手間がかかる上に保険ではその材料費すら請求できないので・・・・(あとは略)
3、ここでやっとラバーダムが出てきます、ここまでが開始する上での必要条件です。
ここからラバーダムをして古いガッタパーチャと言われるゴム栓を取り除くと、この歯の二重苦がある事がわかりました。それは神経の管を消毒する「針」が折れ残っていたのが判明しました。
本来、「治療」は良い方向へ治すために行うのです。しかし、保険診療は治療費としては非常に低評価の中で形にしなければいけませんので、全ての歯科医院が「針の使い回し」をしています。その結果このような結果にたびたびなりますし、そのそも感染予防からも望ましいことではありません。
根管治療は手間も技術も機材も設備も診断力も必要で、運命に逆らうような最後の悪あがきのような処置です。身も蓋もない話ですが神経を取らなければならないような状態にならないように、歯を守る歯科医院を選択し上手に歯科を利用するのが吉です。
そして、もし根管治療が必要な状態で、歯を抜くリスクをできるだけ下げたいのならばプロの歯科医にかかるのをお勧めいたします。今まで書いてきたようにそれはそれは一筋縄ではいかない処置だからです。
続きはまたご報告いたします。
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