社会人になって千葉で勤務している時に購入した物ですから、かれこれほぼ平成の時代を共に歩んできたので30年近い物だったと思います。当院でタオルなどを洗うのに重宝してきました。これは天寿を全うしたと言っても良いかもしれませんね。

 そういう視点で改めて院内を見回してみると・・・ありますあります。開業以来使っている物が、石膏を削る「トリマー」なんかさびさびですね。

モデルトリマーといいます。

顕微鏡なんかも20年使っていて、カメラの電源のコネクターの接触が悪く、写ったり写らなかったり・・・メーカーに問い合わせたら、「もう廃番で線がありません。ですから、カメラごと買い換えれば100万円ほどで新しくなりますよ。」とのこと・・・「修理して使えば問題無いものを部品がないから本体を買いかえればいいとは何事だ」簡単に言わないで欲しいですよね?

手前の黒いケーブルが接触不良なのです。

それをいうなら、正に天然の歯は買い直しが効きません。当たり前ですが歯を抜いたら二度と生えてこないのが永久歯です。歯科業界のインプラントキャンペーンが功を奏したのか、先日も当たり前のように「歯を抜いてインプラントを入れて下さい」と初診の患者さんに言われました。歯の無いところにインプラントというのは日本の国民に定着しているのでしょう。でもですよ、可能な限り抜かずに自分の歯で生活出来た方が私はいいのではないかと考えるのです。
そこで、歯を抜くか抜かないかの瀬戸際の大事な治療が「根管治療」です。
 今回は、根管治療をする事によって歯を支えている骨が再生して無事、抜かずに(今のところですが)すんだ症例をご説明いたします。


前歯の例

最初は分かりやすい前歯の例から説明します。

立体画像だとこんなイメージです。根の先の骨が溶けて空洞になっているのがおわかりだと思います。
ピンクの点線で囲んだ部分です。
CTの輪切り写真です。感染の結果、
根の先が黒いのが骨の溶けている部分です。

CTを使って撮影したものです。根の先が黒くなっているのが分かりますか?

次ぎに根の消毒が終わった後のレントゲン写真です。
まだ、根の先付近が黒いのわかります。

横から見たCT写真です。
根管治療後のレントゲン写真です。

真ん中の歯です、上半分に白く先細りのものが見えると思います。
それが根充剤と言われる「ゴム栓」のようなものです。

分かりにくいかもしれませんので赤い部分が骨が溶けている部分です。
半年ほど後のレントゲンです。

黒い部分が無くなっているのはおわかりでしょうか?
これは、骨が再生していると考えて良いと思います。


臼歯の例

それでは根が複数有る臼歯(奥歯)の例を説明いたします。
レントゲンの見方がちょっと上級編ですよ。


「根の管」にお薬(ゴム栓と言った方が適切かもしれませんが)を詰めた直後の写真です。
このお薬は「根充剤」といい造影剤が練り込まれているので
レントゲンには白く写ります。
解説を入れた図です。根の先あたりに神経や血管が入り込む穴があります。所が途中に穴が空いている場合もあります。これが今回の課題です。
歯の頭からの細菌感染はこの管をつたって
根の周囲に広がります。
イメージすると上記の図の様になります。
治療後半年後のレントゲンです。

歯の二股に分かれていた「又の部分」が黒から白になったのがわかりますかね。黒くなったということはこれも骨が再生してきたと言うことになります。
この様に、適切に根の消毒を行うと、ほとんどの場合骨が再生し歯を失うことから避けられます。

「インプラント」だけでなく「根管治療」も市民権を得られるといいのですけれど今の日本医療制度では難しいところですね。

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